膝痛とは

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膝は人体の中でも大きな負荷がかかる関節であり、スポーツなどでも外傷を受けやすい部位でもあります。
また靭帯など軟部組織によって安定性が保たれている部分も大きく、複雑な構造と動きをすることから、整形外科を受診する患者さまでは膝関節の症例がとても多くなっています。
お子さまでは部活などでのオーバーユース(使いすぎ)、大人では加齢や膝への負荷からくる膝関節の変形や炎症等が膝痛を引き起こします。

膝関節に関わる病気は様々で、治療にも痛みや炎症を改善する投薬や、機能回復を目指すリハビリテーション、関節内注射などによる保存療法、手術療法など様々なものがあります。
当院では、問診、徒手検査、必要に応じてレントゲン検査やMRI検査などの画像検査によって丁寧な診察を行い、患者さまの症状とご希望をよく理解し、適切な治療法を選択していきます。
手術が必要な場合には、受けるべき時期に関しても適切に判断していきます。

膝痛の主な疾患

変形性膝関節症

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症は、主に加齢などが原因となり、膝関節の軟骨が摩耗することで発症するものです。
加齢とともに軟骨が十分に再生されにくくなることもあり、軟骨の下の骨もすり減ってきて、関節がスムーズに動かなくなり、炎症や痛みが生じます。
また膝周囲間の筋肉や組織も硬くなることで、関節に負担がかかることも症状を助長します。
50~60歳で発症することが多く、男性よりも女性に多い傾向にあります。

変形性膝関節症の症状

変形性膝関節症の症状としては、立ち上がる時に痛んだり、階段の上り下りやしゃがむ動作で痛んだりします。
さらに正座ができなくなったり、膝に水が溜まったりするようになります。
筋力が低下して体重を支えられなくなると、歩行時にも痛みが現れます。
進行して末期になると、軟骨がほとんど失われ、O脚などが進行し、足が伸ばせず、歩行困難に陥ることもあります。

変形性膝関節症の治療

治療としては、すり減った軟骨などは基本的に元に戻らないため、痛みの症状に対しては対症療法として薬物療法を行います。

薬物療法として消炎鎮痛剤の内服、ヒアルロン酸の関節注射などがあります。
また膝の負担を軽減するためのダイエットや筋力を保つための運動療法、適切な装具を用いる装具療法、膝の可動域を拡大し膝周囲の組織や筋肉の柔軟性を改善させるなどのリハビリテーションを行います。
さらに理学療法士が患者さま一人一人の状況を判断し、膝に負担の少ない動作の獲得を図っていきます。

こうした治療で痛みが軽減しない場合や、日常生活に困難をきたす場合には、手術を検討します。
手術としては残された膝関節の機能を最大限活用するための関節鏡による手術や、膝周囲の骨切術、さらに人工関節に置き換える手術などがあります。

半月板損傷

半月板は膝を構成する大腿骨と脛骨の間にあって、クッションの役割りを果たしているC型の軟骨の組織です
。これが損傷してしまうと、膝の曲げ伸ばしの際に痛みを感じたり、引っ掛かりを感じたりします。
重症になると膝に水が溜まったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」という状態になったりします。
すると強い痛みを生じて歩くことが困難になります。
そのままにしていると、変形性膝関節症に至る場合もあります。

半月板損傷の原因

半月板損傷の原因としては、スポーツでのケガや日常での転倒などや躓きなどで膝を捻ってしまい、その際に半月板が大腿骨と脛骨の間に挟まれて、損傷することが挙げられます。
捻った際に前十字靭帯を損傷する場合もあり、そうすると半月板損傷も併せて起こってしまいます。
また高齢者では半月板が変性して損傷していることがあり、目だった外傷がなくとも痛みや引っ掛かりなどの症状が現れる場合があります。

半月板損傷の治療

半月板損傷は、軽度であれば安静にしていることで痛みなどの症状は軽快する場合があります。
また鎮痛剤による対症療法やヒアルロン酸の関節注射などを行う、リハビリテーションを行うなどして経過を見ていきます。
こうした保存療法のほか、ダメージを受けた部分を縫い合わせる縫合術、ダメージを受けた部分を取り除く切除術などの手術療法があります。
これらは基本的に関節鏡を用いて行われます。
スポーツへの復帰を目的にするなど、患者さまそれぞれの状態や目標を踏まえつつ、治療を選択していきます。

前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷とは

前十字靭帯は膝関節のほぼ中央にあって、大腿骨と脛骨を支えており、主に脛骨が前方にずれることを防いでいます。
膝にはほかに、脛骨が後ろへずれないようにしている後十字靱帯、膝の左右の動きを抑えて膝関節の安定性を高めている内側・外側側副靱帯があります。
この靭帯に強い力が加わって伸びたり切れたりしてしまうことを靭帯損傷(断裂)といいます。

前十字靭帯損傷の原因

前十字靭帯は膝を安定させるための重要な靭帯で、前十字靭帯損傷をしてしまうと脛骨が前方にずれやすくなり、膝関節が非常に不安定になってしまいます。
損傷の原因となるのは、スポーツでのケガであることが多く、サッカーやバスケットボールなどでジャンプした後の着地、急激な方向転換する、ストップするなどの動作、相手選手との接触で強くひねった場合などに発症します。
このほか交通事故などでも発症する場合があります。

前十字靭帯損傷の症状

前十字靭帯損傷を発症した際には、ガクッと外れたような、また膝が抜けるような感覚を受けます。
また断裂した場合、ブチッという音が聞こえることもあります。直後に激しい痛みがあり、多くは自力での歩行が困難になります。
人体からの出血で関節内には血液が溜まり、急激に腫れてきます。

前十字靭帯損傷の治療

前十字靭帯損傷を発症した場合、ギプス等で固定し、安静にしていることで次第に痛みは軽減し、数週間で歩けるようにはなります。
ただし、損傷した靭帯は自然には元に戻らず、膝関節は不安定な状態のままで、膝くずれと呼ばれる膝が抜けるような感じが生じることもあります。
部分損傷でスポーツをされない方、高齢の方はそのままの保存治療でもよい場合もありますが、スポーツをされる方などは人体の再建手術が検討することになります。

保存治療でも、再建手術を実施した場合でも、リハビリテーションが重要になります。
手術する場合、事前には膝の曲げ伸ばしの訓練、筋力を落とさないための運動などを行います。
手術後は、早ければ翌日から膝の曲げ伸ばし、膝に力を入れるといったトレーニングを開始します。

こうした治療を行って、スポーツに復帰するまでには6~8ヶ月間かかると言われています。

オスグッド・シュラッター病

オスグッド・シュラッター病とは

オスグッド・シュラッター病は、主に成長期のお子さまにおいて、膝前部と下部に生じる痛みや発赤(ほっせき=皮膚が赤くなること)、熱っぽさを生じる病気です。
成長期のお子さまでは、骨の成長に周囲の筋肉の成長が追い付かず、バランスが上手くとれていないことがあります。
そうした時期に過度にスポーツなどを行うと負荷がかかり、軟骨が一部剥がれるなどの刺激が生じるなどし、症状が現れます。

オスグッド・シュラッター病の原因

とくにサッカーやバレーボール、バスケットボールなど、ジャンプやダッシュの多い競技での発症がみられ、過度な練習によるオーバーユース(使いすぎ)や太ももの前の筋肉の柔軟性の低下が大きな原因となり10~15歳のお子さまに多く発症します。
原因となる運動を休止すれば症状は緩和されますが、継続するとさらに悪化しますが、成長期を過ぎれば症状は治まります。

オスグッド・シュラッター病の治療

治療で大切なのは、まず原因となっているスポーツを一時的にやめることです。
お子さまは我慢してスポーツを続けてしまい、症状を悪化させることが多いので、周囲の大人が早めに異常を気づいてスポーツを止めさせ、膝に負荷をかけさせないようにすることが重要です。
症状の緩和には、使いすぎた部分を氷で冷やすアイシングや、サポーターまたはテーピングによる膝蓋靭帯への負荷の軽減が有効です。
また、リハビリテーションとして、適切なストレッチの指導や、膝への負担を減らすためのトレーニングも実施していきます。