小児股関節疾患とは

小児股関節イメージ画像

整形外科が診療を行う領域の中では小児特有のものがあります。
その代表的なものに股関節疾患があります。
乳幼児健診の際に指摘される場合もありますし、歩き方がおかしい、運動発達が遅れている、ということで見つかることもあります。

当院では、お子さまに股関節の異常の疑いがある場合、超音波(エコー)検査やレントゲン検査によって、異常の有無を確認し、適切な診療を行っていきます。

小児の股関節の疾患は、心配せずとも自然に治る場合もありますが、早期に治療を開始せず、放置していると、治りにくくなったり、手術が必要になったりすることもあります。
まずはお気軽にご受診いただき、検査されることをお勧めします。

先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)について

小児の代表的な股関節疾患としては、「先天性股関節脱臼」があります。
これは生まれてくるとき、もしくは生まれた後に大腿骨と骨盤の位置関係が悪く、股関節が脱臼をしている状態を指します。
「先天性」とついていますが、実際には後天的な要素でも脱臼が生じることがあるため、現在では「発育性股関節形成不全」という名称が広く使用されています。

これは股関節の臼蓋等の作りが浅く、亜脱臼や脱臼を起こす可能性のある状態をさします。
股関節は太ももの骨の根元にある丸い部分(骨頭)が、骨盤の丸く凹んだ部分(臼蓋)にしっかりとはまることで自由に動かせる仕組みになっています。
この臼蓋の凹みが浅いと、骨頭が外れやすくなります。
これを臼蓋形成不全と言います。そして外れかかっている亜脱臼の状態から、完全に外れた完全脱臼の状態へと進行していきます。

早期に発見されれば、治癒する可能性は高くなりますが、見逃されてしまうと変形性股関節症などに至り、人工関節が必要となってしまう場合もありますので、不安がある場合、早めのご受診をお勧めします。

以下のチェック項目に当てはまる場合は、発育性股関節形成不全のリスクが高いと考えられますので、注意が必要です。

  • 女児(男児に比べ関節が柔らかいため5~9倍の発症リスクがある)
  • 逆子(足を伸ばして出生する場合に多い)
  • 冬季に生まれた(寒いので厚着で足を固定されるため)
  • 家族に股関節の悪い人がいる
  • 向きぐせがある。反対側の脚が立て膝状態になっている
  • 太ももやお尻のしわの左右差がある
  • 足の開きが悪い

脱臼の診断は超音波(エコー)とレントゲンにて行います。
レントゲンは、骨は見えますが、軟骨がみにくい場合があります。その点、超音波は軟骨をみるのが得意です。
赤ちゃんの股関節は4ヶ月ごろまでは軟骨でできているため超音波で検査をし、6ヶ月を過ぎた頃からは骨に変わってくるため、レントゲンによる検査を行っていきます。

発育性股関節形成不全の治療

治療は発育性股関節形成不全と診断された時期によって異なります。
生後2ヶ月くらいまでなら、おむつの仕方や抱き方の指導のみで多くは改善します。
3~7ヶ月では装具による治療、1~3歳では牽引による治療やギプスによる治療を行います。
4歳を過ぎてしまうと、手術が必要となる場合があります。

このように診断が遅くなるほど治療が難しくなりますので、お早めに検査を受けることをお勧めします。